既存住宅の活用が進められている中で、長期優良住宅が注目されています。本記事では長期優良住宅のメリットやデメリットのほか、具体的な補助金利用手順についてもご紹介します。これからリフォームを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことを指します。主な認定条件は、下記5点です。
- ① 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- ② 居住環境等への配慮を行っていること
- ③ 一定面積以上の住戸面積を有していること
- ④ 維持保全の期間、方法を定めていること
- ⑤ 自然災害への配慮を行っていること
上記全ての措置を講じて必要書類を添え、所管行政庁に申請すると長期優良住宅としての認定が受けられます。認定後、工事が完了すると維持保全計画に基づく点検などが求められます。新築についての認定制度は平成21年6月4日より、既存住宅を増築・改築する場合の認定制度は平成28年4月1日より開始されています。認定を受けた戸数は累計135万戸以上(新築と増築・改築の合計)となっており、通常年間10万戸程度が認定されています。現在では、新築される戸建住宅の4戸に1戸は長期優良住宅を取得しています。
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長期優良住宅化リフォームの対象となる工事
既存住宅でも、適切なリフォームを行うことで長期優良住宅として認定されます。しかし認定を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、長期優良住宅で性能基準を満たすために行われる主なリフォームについてご紹介します。
性能向上リフォーム工事
既存住宅の性能向上のためのリフォームとしては、下記の項目が定められています。
- 劣化対策
- 耐震性
- 省エネルギー性
- 維持管理・更新の容易性
- 可変性(共同住宅・長屋)
- バリアフリー性(共同住宅等)
劣化対策としては、数世代に渡り住宅の構造躯体が使用できることが求められます。木造住宅の場合は「床下空間の有効高さ確保及び床下・小屋裏の点検口設置(一定の条件を満たす場合は床下空間の有効高さ確保を要しない)」、「軸組等(下地材含む)が防腐・防蟻処理されている」、「小屋裏の壁のうち屋外に面するものに換気上有効な位置に2以上の換気口が設けられ、かつ換気口の有効面積が天井面積の 1/300 以上」といった基準に適合する必要があります。
また省エネルギー性に関しては、断熱等性能等級3(既存住宅 の基準、一次エネルギー消費量等級4(既存住宅)及び断熱等性能等級2(既存住宅)の基準、又は、これらに準じる基準に適合する必要があります。さらに窓やドアといった開口部の断熱も求められます。
三世代同居対応改修工事
三世代同居対応改修工事では、リフォーム後に「キッチン・浴室・トイレ・玄関のうちいずれか2つ以上」が複数個所あることが求められます。それぞれの対象工事については、細かく内容が定められています。たとえばキッチンの場合、下記の内容が含まれます。
- 台所流しの設置工事
- ガスこんろ若しくはIHクッキングヒーター又はこんろ台の設置工事
- 食器収納庫、食料品貯蔵庫の設置工事(増設する調理
- 室内又はこれに隣接して設置されたもの)
- 食器棚の設置工事
- ビルトイン食器洗浄機の設置工事
- 給排水設備工事
- ガス・電気工事
- 換気設備工事
- 照明設備工事
- 内装・下地工事
- 給湯器設置又は取替工事
基本的な用途のための設備に限られ、浴室の場合はジャグジー、ミストサウナ、浴室内テレビ、浴室内オーディオ等設置工事は対象外(ユニットバスの場合はその価格相当分を除く)といった規定があります。
子育て世帯向け改修工事
子育て世帯向け改修工事では、子育てしやすい環境整備に資する改修工事に対して補助金が交付されます。若者や子育て世帯の住宅取得を支援する意味合いもあり、既存ストック住宅の活用が期待されています。また要件については、下記の条件があります。
- 若者:工事発注者が40歳未満
- 子育て世帯:18歳未満の子どもがいる
子育て世帯向けリフォーム工事の例としては、下記が挙げられています。
- 住宅内の事故防止
- 子どもの様子の見守り
- 不審者の侵入防止
- 災害への備え
- 親子がふれあえる空間づくり
- 子どもの成長を支える空間づくり
- 生活騒音への配慮
- 子育てに必要な収納の確保
- 家事負担の軽減
具体的には「人感センサー付き照明設備設置工事」、「チャイルドフェンスの設置工事」、「キッチンの移設・交換工事、電気・給排水設備工事、内装工事」といった工事があります。リフォームを通して子どものケガや事故を防いだり、子どもの遊び場を確保したりすることが主な目的となります。
防災性の向上・レジリエンス性の向上改修工事
防災性の向上・レジリエンス性の向上改修工事では、自然災害に対応する改修工事に対して補助金が交付されます。まず防災性の向上に関しては、下記の分野に該当する工事が対象となります。具体的には「制振装置の設置工事、内装・下地補強工事」、「瓦等の交換工事、下地補強工事」、「感震ブレーカー付き分電盤の設置」、「電気設備の浸水対策工事」といった内容が含まれます。
- 地震災害への備え
- 台風(風災害)への備え
- 水害への備え
- 火災への備え
そしてレジリエンス性の向上改修は、下記の分野に該当する工事が対象です。レジリエンスとは「回復力」を表す言葉で、災害復旧を主な目的とします。具体的な工事内容は「蓄電池設置工事」、「V2H(電気自動車からの給電)、パワーコンディショナの設置工事 」、「貯水タンクの設置工事」、「防災用品置き場スペースの設置工事」といったものになります。
- 電力の確保
- 水の確保
- 防災備蓄のためのスペースの確保
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長期優良住宅化リフォームするメリット
ここでは、長期優良化リフォームを行うメリットについてご紹介します。「何となく良さそうなイメージがあるけれど、普通の住宅とどこが違うの?」と思われている方は、ぜひチェックしてみてください。
専門家に劣化箇所等をチェックしてもらえる
長期優良住宅として認定を受けるには、「ホームインスペクション」を受ける必要があります。これは現況調査と呼ばれ、インスペクターによる建物の劣化事象等の調査のことを指します。調査は既存住宅状況調査技術者やインスペクター講習団体の講習を受けた建築士が行うため、建物の状況が適切に把握できるのがメリットです。
インスペクションの結果、気づいていなかった雨漏りや蟻害、不同沈下が確認できたという事例も多いです。逆に建物の状態が良いことが確認できれば、リフォームが不要になることもあるでしょう。
減税対象になる
長期優良住宅では、様々な減税制度を受けられます。具体的には、下記のような種類があります。
- 固定資産税:減税
- 所得税:一定額を控除
- 登録免許税:減税
- 贈与税:非課税枠の拡大
「固定資産税」は所有している不動産に対して課されるものですが、長期優良住宅であれば取得時から5年間減税措置が受けられます。また「所得税」に関しても、長期優良住宅に改修した年は一定額が控除されます。
また「登録免許税」は不動産取得時にかかる税金ですが、一般住宅よりも長期優良住宅の方が税率が低く設定されています。そして、不動産購入資金を親族等から援助してもらう際には「贈与税」が掛かります。しかし省エネ住宅等の長期優良住宅は、1000万円まで非課税となるためお得です。
住宅ローンの金利が安くなる
住宅ローンの金利は、建物の種類や各種条件によって変動します。基本的に耐久性や省エネ性能の高い建物の方が、安い金利の審査が下りることが多いです。長期優良住宅であれば、住宅金融支援機構の「フラット35」で優遇金利が受けられます。
長期優良住宅は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携した住宅ローンである「フラット35S」を利用する際に金利優遇が受けられます。フラット35Sでは、長期優良住宅などの質の高い住宅を購入する際に一定期間金利が引き下げられます。当初5年間は年0.5%引き下げ、6~10年目までは年0.25%引き下げとなります。
また同様に、地震保険料についても割引価格が適用されることが多いです。地震保険は、建物の耐久性のレベルに応じて割引率が異なります。具体的には「等級1が10%、等級2が30%、等級3が50%」となります。ただしこうした割引を受けるには、長期優良住宅であることを証明する書類が必要です。正確な等級を確認できるようにするため、不備の無いように提出しましょう。
資産価値が向上する
長期優良住宅では品質の高い建材や設備などを利用しており、耐久性があります。これにより修繕やメンテナンスのコストが低く抑えられ、長期的に価値を維持できます。また省エネルギー設計や再生可能エネルギーの面でも、価値が高いです。エネルギー効率が高くランニングコストが低いため、将来的なエネルギーコストの上昇に対しても優位性があります。
長期優良住宅は建築基準法や環境基準などの法律や規制に適合しているため、将来的な法改正や規制強化に対するリスクも低くなります。環境への配慮や省エネルギー志向が高まる中で、長期優良住宅への需要が増加しています。需要の増加に伴い、供給が増えれば、資産価値が上昇する可能性があります。
ただし建物の価値は地域や地価、周辺環境などの影響も受けるため、必ずしも資産価値が上昇するとは限りません。また資産価値の変動は市場の動向や経済状況にも影響され、将来の価値の変動を正確に予測することは難しいと言えます。
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長期優良住宅化リフォームするデメリット
長期優良住宅にリフォームするメリットは多いですが、デメリットもあります。リフォームにあたって注意点を知っておくことで、より後悔の少ない施工に繋げましょう。
申請に時間と費用がかかる
長期優良住宅化リフォームの申請には、時間と費用が掛かることが多いです。具体的には建築設計や省エネルギー性能の評価書の作成、関係機関への提出、審査などが含まれます。こういった手続きの情報収集や文書の作成に手間が掛かるため、1ヵ月以上の期間が必要なケースも多いでしょう。
実際に申請を行うのは、一般のお施主様ではなくリフォーム業者です。専門家やコンサルタントの支援を受ける必要があり、そのためのコストや調整に時間がかかる可能性があります。また申請が提出された後も審査のプロセスがあります。審査の進捗や結果によっては結果にかかる時間が長引くことがあり、リフォーム計画の実施スケジュールに影響を与える可能性があるでしょう。さらに通常、審査後の認定では数千円~数万円程度の手数料も必要になります。
リフォーム費用が高額になる
長期優良住宅化リフォームは、通常のリフォームに比べて費用が高額になりやすいです。具体的には、下記の点で追加費用が掛かるでしょう。
- 高性能化への投資
- 申請手続きの費用
- 追加工事の必要性
長期優良住宅化リフォームでは、省エネルギーや耐震性、耐久性などの高性能化が求められます。これには高品質な建材や設備、断熱材、二重・三重サッシ、高効率のエネルギーシステムの導入などが含まれます。通常のリフォームよりも高品質な建材・設備を使用することが、費用が高くなる要因となります。
また、長期優良住宅の認定申請には一定の費用がかかります。これには申請書の作成、手数料、審査費用などが含まれます。専門家やコンサルタントを雇う場合には、適切な設計や性能評価、申請手続きの費用が別途必要です。
さらに長期優良住宅の適合基準は厳格であり、それに適合するために追加工事や設備の更新が必要となることがあります。追加工事では人件費や現場維持費が掛かるため、総額コストが増加してしまうでしょう。これらの要因が合わさり、長期優良住宅化リフォームの費用が高額になるとされています。
定期的なメンテナンスが必要になる
長期優良住宅化リフォームのデメリットの一つとして、定期的なメンテナンスが必要になる点が挙げられます。具体的なメンテナンスのポイントには、下記が挙げられます。
- 高性能設備・機器の維持と管理
- 断熱材・二重サッシ・高効率窓などの保守
- エネルギー効率の維持
- 防湿・防カビ対策
長期優良住宅では高性能な設備や機器が多く導入されるため、これらの定期的な点検や保守が必要です。例えば、省エネルギー設備や再生可能エネルギーシステム、高効率の給湯器などは、適切なメンテナンスを行わないと性能が低下する可能性があります。同様に断熱材や二重サッシ、高効率窓についても、劣化や損傷が発生した場合には修理や交換が求められます。
長期優良住宅では、防湿や防カビ対策が重視された設備設計が行われます。これらの効果を維持するためには、定期的な換気や湿度管理、清掃などが必要です。管理を怠ると、木材の腐食や健康被害を及ぼす可能性があるでしょう。
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補助金を利用する手順
長期優良住宅に認定されれば、各種補助金制度を利用できます。代表的なものとしては、国土交通省が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が挙げられます。省エネ性能等を有する住宅(省エネ基準相当)への改修工事を行った場合、1戸あたり最大100万円(補助率:1/3)が交付されます。長期優良住宅の場合は、最大金額が200万円に引き上げられるためとてもお得です。
ここでは、長期優良住宅化リフォーム推進事業で補助金を受け取るための手順について詳しくご紹介します。
事業者登録された事業者を探す
本事業では、施工業者(補助事業者)が申請手続きを行います。手続きを行うには「事業者登録」が完了していることが条件となるため、依頼先のリフォーム業者が該当しているか確認しましょう。もし登録が完了していない場合には補助金が受けられないため、注意が必要です。
事業者が登録完了しているかどうかは、国土交通省の「令和5年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業」サイトにて確認できます。
インスペクションを受ける
リフォーム工事前にインスペクションを行い、建物の状況を把握する作業が必要となります。これは、「既存住宅状況調査技術者」が実施することが条件です。もし既存住宅状況調査技術者が住宅の近くにいない場合は、あらかじめ実施支援室に相談し了解を得た上で、建築士が実施することも可能です。
インスペクションやリフォーム履歴の作成等に係る費用については、通年申請タイプの場合は「事業者登録後」、事前採択タイプの場合は「採択後」に実施したものが補助対象となります。補助金交付には委託契約書等の写しの提出が必要となるため、契約後に実施する必要があります。これらの費用を補助対象に含めない場合には、事業者登録や採択の前に実施しても差し支えありません。ただしインスペクションについては、工事着手日の1年前の日以前に実施したものは補助事業には活用できません。そのため、工事に近い日程で改めて実施する必要があります。
インスペクションで劣化事象等不具合が指摘された場合、以下のいずれかの措置をとります。
- リフォーム⼯事の内容に含めて改修(※ 評価基準に規定されている著しい劣化事象及び⾬漏りが⽣じている部分については補修が必要)
- 維持保全計画に補修時期⼜は点検時期を明記
維持保全計画を作成し、工事請負契約を締結する
インスペクションで課題の洗い出しができたら、維持保全計画や住宅履歴情報を作成します。住宅履歴情報とは、住宅の設計、施⼯、維持管理等に関する情報のことを指します。住宅の新築時や点検、リフォームなど維持管理時の情報を蓄積しておくことで、次の維持管理や売買の際に情報が分かりやすくなります。
これらの作成については、必ずしも建築士が作成する必要はありません。ただし建築士が実施することとされている経費を補助対象とする場合は、建築士事務所登録された事務所に所属する建築士に依頼した場合に限り、補助対象となります。
上記の情報を踏まえて、工事請負契約を締結します。いずれの費用も、補助の対象とする業務等を実施することが明記された「契約書の写し」と当該費用の支払いを確認できる「領収書の写し」が提出されるものに限り補助対象となります。
住宅登録・交付申請
住宅登録とは、リフォーム工事を実施する住宅が決まった時点で住宅の所有者(施主)や住宅の所在地等の情報を登録することを指します。これはお施主様ではなく、リフォーム業者が行う作業です。
補助金交付申請は、評価基準型の場合、定められた期間内でかつ住宅登録した後、原則1ヶ月以内に支援室に提出する必要があります。1ヶ月以内に交付申請書類が提出されず、所定の手続きがなされない場合、ポータルサイトのシステムがロックされ、以後交付申請不可となります。
交付決定されたらリフォーム工事をおこなう
基本的に、交付が決定されなければ補助金の交付対象とはなりません。そのため交付が決定されてから着工するのが理想的です。しかしリフォーム工事に先行してインスペクションや維持保全計画の作成が必要となることや、居住している住宅において工事等を行うものであることから、機動的に対応可能な手続きの流れとなっています。
場合によっては着工後に補助金が受けられなくなることもありますが、実際にはそれを了承した上で交付決定前に着工されるケースが多いでしょう。
完了実績報告をおこない、交付額確定通知を受け取る
リフォーム工事が完了したら、完了実績報告を提出します。交付決定の内容やそれに附した条件どおり補助事業が行われているかどうかについて、書類審査及び必要に応じて実施する現地検査等が行われます。適合すると認められれば補助金の額が確定され、補助事業者に「補助金の額の確定通知書」が届きます。
現地検査では、工事請負契約書等の原本や工事の着手時期が確認できる管理記録写真や工事過程の記録等が必要になるため、写真や領収書等の原本を用意しておきましょう。ただし、交付決定後に何らかの変更があったにもかかわらず、その報告をせずに異なる工事を行ったと判断された事業については、補助金が交付されない、又は、補助金額が減額される可能性があります。
補助金が還元される
補助金の交付が決定したら、リフォーム事業者に振り込まれます。そのためリフォーム事業者は、お施主様に全額を還元する義務があります。還元方法は、主に下記2種類です。
- 補助金受領後に、補助事業者が補助金全額を共同事業者(発注者)に支払う方法
- 補助事業者が、支払代金のうち補助金相当額の支払いを猶予し、受け取った補助金を当該猶予した支払いに充当する方法
どちらの方法にするかは事前に打ち合わせで決定しておき、交付申請書とあわせて提出することになっています。いずれにしても補助金が帰ってくるのは工事完了後になってしまうため、最初にまとまった費用が必要です。
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まとめ
長期優良住宅にリフォームすれば、住み慣れた家で長きにわたって暮らし続けることが可能になります。申請には手間や時間が掛かってしまいますが、長期的な視点で見るとお得な点も多いです。これからリフォームを検討されている方は、ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。
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